
初めて展示会に出展する企業の担当者には、施工会社から見積書と図面が、主催者からは出展マニュアルが届きます。そこに並ぶ「小間割図」「セットバック」「二次側電気工事」「経師」といった言葉が分からず、手が止まってしまう方は多いのではないでしょうか。この記事は、そうした初出展企業の担当者に向けた展示会ブース施工の用語集です。
用語は五十音順で覚えるより、「いつ・誰に・何を出すか」という準備の時系列で押さえるほうが判断ミスを減らせます。特に、ブースの構造、電気工事の区分、装飾規定、印刷物の入稿にかかわる用語は、費用と締切に直接響きます。読み終えるころには、見積書のどの項目を施工会社に確認すべきか、主催者への申請は何をいつまでに出すかを、ご自身で判断できるようになるはずです。
- 小間・開放面・ブース構造の3つの用語で、ブースの形と費用の大枠が決まる
- 電気工事は主催者に申し込む一次側と、小間内の二次側に分けて考える
- 用語は申込から会期後までの時系列で覚えると、申請漏れと締切遅れを防げる
- ターポリンや入稿データなど印刷系の用語を押さえると、色や文字の事故を減らせる
展示会ブース施工でまず覚えたい基本用語

小間・小間割図と開放面で決まる形
最初に覚えたいのは「小間(こま)」です。小間は主催者が出展者に割り当てる区画の単位で、ブースの広さはこの小間数で決まります。1小間の寸法は3,000mm×3,000mm(9平米)を基本とする展示会が多いものの、主催者によって寸法が異なるため、必ず出展マニュアルの数値を確認してください。
「小間位置」は会場のどこに区画があるか、「小間割図」は全出展者の配置を示した図面です。小間割図を見ると、通路の幅や人の流れ、隣のブースとの関係が分かります。来場者がどちらから歩いてくるかによって、社名板を置く向きも変わってきます。
「開放面」は、通路に面して開いている辺の数です。1面開放は三方を壁や隣接ブースに囲まれた形、2面開放は角地、3面開放は列の端、4面開放は周囲すべてが通路の「島小間」を指します。開放面が多いほど人を呼び込みやすい一方、壁が少ないぶん展示物やグラフィックの見せ方に工夫が必要です。壁で囲んだ「セミオープン」、ほぼ壁を立てない「オープン」といった呼び方もあります。
システム・木工・パッケージブースの違い

ブースの構造は、費用・デザインの自由度・準備期間を左右する、最も影響の大きい用語です。「システムブース」は、規格化されたアルミの柱と梁、パネルを組み合わせて作るブースです。オクタノルムやマキシマライトといった部材、柱と梁で骨組みを作るトラスなどがこれに当たります。「木工ブース」は、合板などの木材を加工して造作するブースです。
| 種類 | 費用の傾向 | デザインの自由度 | 準備期間 |
| システムブース | 部材を再利用できるため抑えやすい | 規格寸法の範囲内に限られる | 比較的短い |
| 木工ブース | 造作が増えるほど上がる | 形状・仕上げを自由に作れる | 設計と製作に時間がかかる |
| パッケージブース | 主催者の定額料金で把握しやすい | 決められた仕様から選ぶ | 申込だけで済み短い |
「パッケージブース」は、主催者が用意するレンタル装飾のセットです。壁・社名板・照明・机などがひとまとめになっており、初出展で予算を読みやすい点が魅力です。ただし、他社と見た目が似やすいという面もあります。
装飾規定・セットバック・高さ制限

「装飾規定」は、主催者が定めるブース装飾のルールです。出展マニュアルに書かれており、守っていないと会場で手直しを求められることがあります。デザインを決める前に読んでおくべき項目です。
代表的なのが「高さ制限」と「セットバック」です。高さ制限は、壁や看板を立てられる最大の高さを指します。セットバックは、一定の高さを超える部分を通路側から内側へ下げて配置するルールです。隣接ブースとの境界に関する規定や、島小間だけに適用される条件がある展示会もあります。
数値は展示会ごとに違うため、一般的な目安で判断しないでください。施工会社に図面を依頼するときは、出展マニュアルの該当ページを一緒に渡すと確認が早く進みます。
一次側・二次側の電気工事と申込書
電気工事は、費用と手続きの窓口が2つに分かれる点が分かりにくい部分です。「一次側電気工事(電気幹線工事)」は、会場の電源から小間まで電気を引く工事で、主催者または主催者指定の業者が行います。出展者は「電気供給申込書」で必要な電気容量を申し込みます。
「二次側電気工事」は、小間の中に引き込んだ電気を、照明・コンセント・モニターなどへ分配する工事です。こちらはブースの施工会社が担当するのが一般的です。見積書に出てくる「電気・照明」の項目は、主にこの二次側を指します。
一次側の電気供給申込書には主催者が定めた締切があり、容量が足りないと会期中に照明やモニターが使えなくなります。施工会社と照明・映像機器の台数を確定させてから申し込み、締切は出展マニュアルで必ず確認してください。
私たちの展示会支援では、主催者へのレンタル備品や電気工事の申込を代行しています。
製作と施工、墨出しから撤去と内装材

見積書では「製作」と「施工」が別項目になることがよくあります。製作は、ブースの部材や装飾物を事前に準備・加工する作業です。施工は、会場で組み上げる作業を指します。製作は工場で、施工は会場で行うと覚えると混同しません。
会場での流れは、「搬入」で部材を運び込み、「墨出し」で床に壁や柱の位置を印してから組み立てに入ります。会期が終わると「撤去」で解体し、「搬出」で運び出します。搬入出には時間帯や車両の指定があるため、施工会社と主催者のスケジュールをすり合わせておく必要があります。
内装材の用語もいくつか押さえておきましょう。「パンチカーペット」は、展示会で床に敷く薄手のカーペットです。「経師(きょうじ)」は、木工の壁に紙やクロスを貼って仕上げる作業で、「表具」と呼ばれることもあります。「社名板」はブース上部などに掲げる社名の看板、「什器」は展示台・カウンター・棚などの備品、「パース」は完成イメージ図です。私たちは、ブースデザインを3DCGパースでご提出しています。
什器は既製品のレンタルもできますが、展示物のサイズや重さに合わせて設計するのが基本で、一律の寸法で足りるとは限りません。重い製品を載せる展示台では、天板の厚みや脚の構造が変わります。
準備の時期別に見る展示会ブース施工の用語

申込から会期後まで時期別に出る用語
同じ用語でも、どの時期に必要になるかが分かると、準備の順番が見えてきます。下の表は、出展準備の流れに沿って、よく出てくる用語と書類を整理したものです。
| 時期 | 主な用語・書類 | 主なやり取りの相手 |
| 出展申込 | 出展申込書、小間数、小間位置、小間割図 | 主催者 |
| 計画・設計 | パース、平面図、装飾規定、開放面 | 施工会社 |
| 各種申請 | 電気供給申込書、レンタル備品、装飾・構造の申請、搬入出の届出 | 主催者 |
| 製作 | 入稿データ、色校正、什器製作、グラフィック出力 | 施工会社・印刷会社 |
| 施工 | 搬入、墨出し、二次側電気工事、経師 | 施工会社 |
| 会期・撤去 | 撤去、搬出、産廃、原状回復 | 施工会社・主催者 |
| 会期後 | 名刺データ化、リード、MA、LP | 社内・支援会社 |
つまずきやすいのは「各種申請」の時期です。主催者への書類は締切が個別に設定されていることが多く、設計が固まる前に締切が来るケースもあります。私たちは出展が決まった段階で、アフターフォローまでの工程を一覧にした出展計画工程管理シートを作成しています。社内で準備する場合も、締切を一枚の表にまとめておくと抜け漏れが減ります。
会期後の用語も、施工と無関係ではありません。「リード」は見込み顧客、「MA」はマーケティングオートメーションの略で、獲得した名刺に対して継続的にメールなどを届ける仕組みです。ブースにQRコードを掲示してLP(ランディングページ)へ誘導すれば、名刺交換以外の接点も残せます。
見積書の項目を用語で読み解くコツ
見積書は、ここまでの用語を知っていれば項目ごとに意味が読み取れます。大切なのは、各項目が「何を、どの範囲まで」含むのかを確認することです。同じ「ブース壁」でも、システムか木工かで金額の桁が変わることがあります。
- 床:パンチカーペットか、別の床材か。色指定は可能か
- ブース壁:システムブースか木工ブースか。経師などの仕上げは含まれるか
- 電気・照明:二次側工事のみか。一次側の申込費用は別か
- 映像機器・弱電:モニターの台数やサイズ、Wi-Fiなど通信の手配の有無
- リース品:什器・備品はレンタルか購入か
- サイン・グラフィック:ターポリン、カッティングシートなどの面積と枚数
- 産廃:撤去後の廃材処分費が含まれているか
特に見落としやすいのが、電気の一次側と産廃です。一次側の費用は主催者から別途請求されることがあり、施工会社の見積書には入っていない場合があります。産廃は、木工ブースほど廃材が増えるため金額に差が出ます。
複数社の見積を比べるときは、合計金額だけでなく、この項目ごとの範囲をそろえて比較してください。範囲がそろっていない見積を並べても、どちらが割安かは判断できません。
ターポリン・入稿データなど印刷の用語

ブースの印象を大きく左右するのがグラフィックですが、印刷系の用語は施工の用語集で扱われることが少ない部分です。「ターポリン」は、塩化ビニル系の丈夫な膜材に大判で出力するもので、壁面や懸垂幕によく使われます。「ダイレクトプリント」は、ボードなどの素材に直接印刷する方法です。「カッティングシート」は、色付きのシートを文字や図形の形に切り抜いて貼るもので、社名やロゴに向いています。
入稿データでは、3つの言葉を押さえておきましょう。「解像度」は画像のきめ細かさで、大判では原寸で必要な数値を満たしているかが重要です。「塗り足し」は、仕上がりサイズの外側まで背景を広げておく余白で、断裁や施工時のずれに備えます。「アウトライン化」は、文字を図形データに変換して、フォントが置き換わる事故を防ぐ処理です。必要な数値や形式は出力方法によって変わるため、施工会社や印刷会社の入稿ガイドに従ってください。
「色校正」は、本番前に試し刷りをして色味を確認する工程です。モニターで見た色と出力した色は一致しないことが多く、コーポレートカラーを正確に出したい場合は色校正の有無を見積段階で決めておくと安心です。
大判のグラフィックは、誤字に気づいても会場で直せません。文字校正は入稿前に済ませる工程として、施工のスケジュールに組み込んでおきます。
私たちの校正部門には、漢字検定準1級の資格者を含む校正専門のスタッフが在籍しており、文字の誤りだけでなく原稿自体の間違いも確認しています。ブースのグラフィックとカタログやチラシを同じ流れで校正できると、表記の食い違いも防げます。
防炎物品・構造申請など消防と安全
消防と安全の用語は、知らないと会場で使えない装飾が出てしまう分野です。「防炎物品」は、燃えにくい性能を持つと認められたカーテンや布・シートなどを指し、「防炎ラベル」はその性能を示す表示です。展示会では、会場や所轄消防署の基準により、装飾に使う布やシートに防炎性能を求められることが一般的です。
ターポリンや布製のグラフィックを使う場合も、防炎仕様の素材かどうかを発注時に確認しておきましょう。後から防炎加工を追加するのが難しい素材もあります。
構造に関する申請もあります。ブースに天井を設ける場合や、2階建て構造にする場合は、主催者や所轄消防への申請・承認が必要になるのが一般的です。裸火や危険物の持ち込み、デモンストレーションでの火気使用も、届出や許可の対象になることが多い項目です。
これらの条件や締切は展示会ごとに異なり、出展マニュアルの「消防」「安全」の章にまとめられています。デザイン案に天井や布の大きな装飾が含まれているときは、その時点で施工会社に申請の要否を確認してください。
総括:展示会ブース施工の用語を発注判断に生かす
展示会ブース施工の用語は、意味を覚えるだけでなく、費用と締切にどう影響するかと結びつけて押さえることが大切です。小間・開放面・ブースの構造でブースの形と費用の大枠が決まり、電気は一次側と二次側で窓口が分かれます。装飾規定や防炎などの消防ルールは、デザインを決める前に確認しておきます。さらに、ターポリンや入稿データといった印刷系の用語を知っておくと、グラフィックの事故を防げます。
まずは手元の出展マニュアルから申請の締切を書き出し、見積書の各項目がどの範囲までを含むのかを施工会社と照らし合わせるところから始めてみてください。




