
この記事は、新しい会社サイトの構築を進めているWeb担当者に向けたものです。制作会社からCMSに「MODX」を提案されたものの、初めて聞く名前で、社内でどう説明すればよいか迷っている状況を想定しています。
MODXはライセンス費のかからないオープンソースのCMSで、ページの見た目をHTMLで自由に組める設計の柔軟さが強みです。その反面、日本語の情報と扱える制作会社が少ないため、作った会社に保守を頼り続ける形になりやすい点が最大の注意点です。
読み終えるころには、MODXの仕組み、費用が発生する場所、自社サイトに選んでよいかの判断軸がそろい、制作会社に確認すべき質問を自分で用意できるようになります。
- MODXはライセンス費無料のオープンソースCMSで、HTMLを縛らずに自由な設計ができる
- 費用はライセンスではなく、設計・テンプレート制作・サーバー・保守にかかる
- 日本語情報と対応できる制作会社が少なく、保守先を確保できるかが選定の分かれ目になる
- デザインの再現性や入力項目の統一を重視するBtoBサイトに向き、社内で完結させたい場合は慎重に判断する
オープンソースCMSのMODXの特徴とは

MODXの基本と無償で使える仕組み
MODXは、Webサイトのページや記事を管理画面から更新するためのCMS(コンテンツ管理システム)です。ソースコードが公開されたオープンソースソフトウェアとして配布されており、ライセンス料を払わずに利用できます。配布元や最新版の情報はMODX公式サイトで確認できます。
仕組みとしては、PHPというプログラム言語で動き、MySQLなどのデータベースにページの内容を保存します。そのため、PHPとデータベースが使える一般的なレンタルサーバーやクラウドサーバーに設置して運用できます。公式からは有償のホスティングサービスも提供されていますが、利用は必須ではありません。
ここで押さえておきたいのは、「無償」が指しているのはソフトウェアのライセンスだけだという点です。サーバーを借りる費用、サイトのデザインやテンプレートを作る費用、公開後に更新を続ける費用は、ほかのCMSと同じように発生します。無料のソフトを使うというより、「土台は無料で、その上に家を建てる費用がかかる」と捉えると、見積もりを見たときに戸惑いません。
テンプレートとチャンクで組む設計の自由度

MODXの最大の特徴は、サイトの見た目をほぼ制限なくHTMLで組める点です。CMS側が決まったデザインを押し付けず、制作者が書いたHTMLの中に「ここにページタイトルを入れる」「ここに共通のフッターを入れる」といった目印を埋め込んでいく方式をとっています。
この部品の組み合わせを理解しておくと、制作会社の説明がぐっと分かりやすくなります。主な部品は次のとおりです。
| 部品の名前 | 役割 | BtoBサイトでの使いどころ |
| テンプレート | ページ全体の骨組みとなるHTML | 製品ページ用、お知らせ用など種類ごとに用意する |
| チャンク | 使い回すHTMLの断片 | ヘッダー、フッター、問い合わせ導線を全ページで共通化する |
| テンプレート変数 | ページごとに追加できる入力欄 | 型番、仕様、PDFカタログなどの専用欄を作る |
| スニペット | PHPで書く小さな処理 | 新着一覧や関連製品の自動表示を作る |
| プラグイン | 特定のタイミングで動く処理 | 保存時のチェックや通知などを加える |
実務で効いてくるのは、テンプレート変数です。たとえば製品ページに「型番」「主な仕様」「カタログPDF」の入力欄を用意しておけば、更新担当者は欄を埋めるだけで、レイアウトの崩れないページを公開できます。担当者が変わってもページの品質がそろいやすく、デザインを細かく指定したブランドサイトとも相性が良い設計です。
ほかにも、利用者ごとに編集できる範囲を細かく分ける権限設定や、1つの管理画面で複数のサイトを扱う「コンテキスト」という仕組みがあります。事業部ごとに更新担当を分けたい企業では、こうした機能が判断材料になります。
一方で、この自由度は「最初に誰かが設計して作り込む」ことが前提です。導入してすぐに見栄えのよいサイトができるタイプのCMSではない、という点は理解しておく必要があります。
導入・制作にかかる費用の内訳

MODXの導入費用は、ライセンス以外の項目で決まります。金額はページ数、入力欄の設計の細かさ、追加機能の数によって大きく変わるため、一律の相場で考えるより、どの項目にいくらかかっているかを分けて把握するほうが判断を誤りません。
| 費用項目 | 内容 | 発生するタイミング |
| ライセンス | MODX本体の利用料。オープンソースのため不要 | なし |
| サーバー | PHPとデータベースが動く環境の利用料 | 毎月または毎年 |
| 設計 | ページの種類、入力欄、権限の割り振りを決める作業 | 構築時 |
| テンプレート制作 | デザインをHTML化し、MODXの部品に組み込む作業 | 構築時 |
| 追加機能 | フォームや多言語対応などの拡張機能の導入・設定。有償の拡張機能もある | 構築時、更新時 |
| 保守 | 本体や拡張機能のアップデート、バックアップ、不具合対応 | 公開後に継続 |
| 操作説明 | 更新担当者向けのマニュアル作成や説明会 | 公開前後 |
MODXでは、設計とテンプレート制作の比重が大きくなりがちです。自由に組める分、入力欄やページの種類を一から決める工程があるためです。逆に言えば、この工程に時間をかけたサイトほど、公開後の更新が楽になります。
「ライセンス無料」は総額の安さを意味しません。見積もりでは構築費だけでなく、公開後の保守費が毎月いくらで、何が含まれるかを必ず確認してください。
拡張機能は「Extras」と呼ばれ、管理画面から追加できます。便利な反面、本体のバージョンアップに追随していないものもあるため、何を入れるかは保守のしやすさとあわせて決めるのが安全です。
日本語情報や対応会社が少ない弱点
MODXを選ぶうえで最も重い弱点は、日本語の情報と対応できる制作会社の少なさです。公式ドキュメントやフォーラムは英語が中心で、トラブルが起きたときに日本語で検索しても答えが見つからないことがよくあります。
この弱点は、運用の段階で効いてきます。構築した制作会社が保守を続けてくれる間は問題が表に出にくいのですが、担当者の退職や契約の終了で引き継ぎ先を探すことになると、候補がなかなか見つかりません。結果として、最初の制作会社に依存し続ける形になりやすいのです。
セキュリティ面では、利用者が少ない分だけ無差別な攻撃の標的になりにくいと言われることがあります。ただし、それは更新しなくてよい理由にはなりません。脆弱性が見つかれば修正版が出るため、本体と拡張機能のアップデートを続ける体制があって初めて安全に使えます。
とはいえ、この弱点は事前の取り決めで小さくできます。設計内容やテンプレートの構成を文書で残してもらう、管理者アカウントとサーバーの契約を自社名義で持つ、といった対策をとっておけば、将来の引き継ぎが現実的になります。対応会社が少ないこと自体より、「引き継げない状態で作ってしまうこと」が本当のリスクだと考えてください。
オープンソースCMSのMODXを選ぶ条件

MODXが向いているサイトの条件
MODXが力を発揮するのは、デザインの再現性と入力の統一を両立させたいサイトです。特にBtoBの会社サイトや製品サイトでは、ページの種類が決まっていて、同じ形式の情報を継続的に追加していく場面が多いため、MODXの設計思想と噛み合います。
- デザインを細かく指定しており、既製のテーマでは再現できない
- 製品、事例、お知らせなど、決まった形式のページを継続的に増やす
- 型番や仕様など、ページごとに決まった入力項目をそろえたい
- 部署ごとに編集できる範囲を分けたい
- 構築後も同じ制作会社に保守を任せる前提で予算を組める
現場でよく見るのは、カタログやパンフレットで作り込んだブランドの見せ方を、Webでも崩さずに出したいというケースです。印刷物と同じトーンを保ちながら、更新は担当者が入力欄を埋めるだけで済む、という状態を作りやすいのがMODXの利点です。
反対に、どの条件にも当てはまらない場合は、MODXを選ぶ積極的な理由は薄くなります。「珍しいCMSだから安全そう」という理由だけで選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
導入を見送るべきケースの判断軸

MODXを見送ったほうがよいのは、主に体制面の条件が整わないときです。機能が足りないから見送るというより、運用を支える人や会社を確保できないことが理由になる場合がほとんどです。
- 社内だけで構築・保守まで完結させたい
- MODXを扱える技術者が社内にいない場合、日本語情報の少なさが直接の負担になります。将来の内製化を目指すなら、育成の期間と費用まで見込めるかで判断します。
- 保守費を継続して確保できない
- 構築費は出せても、毎月の保守費が出せない場合はアップデートが止まり、安全性が保てなくなります。公開後の予算が確保できるかが判断の分かれ目です。
- 引き継ぎ先の候補が見当たらない
- 提案してきた制作会社以外にMODXを扱える会社の目星がない場合、依存のリスクを受け入れられるかを社内で確認しておきます。
- 短期間で公開したい
- 設計とテンプレート制作に時間がかかるため、公開日が迫っている案件では不向きです。スケジュールに設計の工程を確保できるかを見ます。
見送る判断は、MODXの評価が低いという意味ではありません。自社の体制と予算が合っていないと分かった時点で別の選択肢を検討できれば、むしろ健全な判断です。
BtoBサイトでの導入手順と体制

MODXでサイトを作る場合、最初の設計にどれだけ時間をかけるかで、公開後の使いやすさが決まります。BtoBサイトでの標準的な進め方は次のとおりです。
- サイトの目的と、問い合わせや資料請求などのゴールを決める
- 製品、事例、お知らせなど、必要なページの種類を洗い出す
- ページの種類ごとに入力欄(テンプレート変数)を設計する
- 更新担当者と、部署ごとの編集範囲を決める
- デザインを作り、テンプレートとチャンクに組み込む
- テスト環境で担当者が実際に入力し、使いにくい点を直す
- 公開し、保守とアップデートの手順を確認する
体制づくりで欠かせないのは、社内の窓口を1人に決めることです。製品情報は事業部、採用情報は人事、と更新者が分かれる企業ほど、入力欄の設計に各部署の意見を反映させる調整役が必要になります。
手順の6番目にあたるテスト入力は、省略されがちですが重要です。設計した入力欄が現場の情報の持ち方と合っていないと、公開後に「この情報を入れる場所がない」という問題が起きます。実際に更新する人に一度触ってもらうことで、こうしたズレを公開前に解消できます。
見積もりで確認したい項目
MODXでの構築を発注する前に、見積もりと提案内容で確認しておきたい項目をまとめます。どれも、後から聞くと交渉しにくくなるものです。
- 構築費が、設計・テンプレート制作・追加機能に分けて記載されているか
- 使う拡張機能の名前と、有償のものがあればその費用
- 月額保守費に、本体と拡張機能のアップデートが含まれるか
- サーバーの契約名義と、管理者アカウントの持ち主が自社になっているか
- 設計書やテンプレート構成の資料を納品物に含めてもらえるか
- 更新担当者向けのマニュアルや操作説明が含まれるか
- 制作会社のMODXでの構築実績と、担当できる技術者の人数
とくに重いのは、名義と資料の項目です。サーバーやアカウントが制作会社の名義のままだと、契約を見直したいときにサイトごと動かせなくなる恐れがあります。設計の資料が残っていれば、別の会社に引き継ぐときの調査費用も抑えられます。
担当できる技術者の人数も、遠慮せずに聞いてかまいません。1人しか扱えない状態だと、その人が不在のときに対応が止まります。複数人で対応できるか、緊急時の連絡体制がどうなっているかまで確認しておくと安心です。
総括:オープンソースCMSのMODXを選ぶ判断軸
MODXは、ライセンス費が不要で、テンプレートやテンプレート変数を使ってデザインと入力項目を自由に設計できるオープンソースCMSです。
費用はライセンスではなく、設計、テンプレート制作、サーバー、保守にかかり、とくに公開後の保守費をどう確保するかが重要になります。
最大の弱点は日本語情報と対応会社の少なさで、名義と設計資料を自社で押さえ、引き継げる状態で作ることが対策になります。デザインの再現性や入力の統一を重視するBtoBサイトには向き、社内で完結させたい場合や保守費を出せない場合は見送りも検討してください。
まずは自社サイトに必要なページの種類と、それぞれの入力項目を書き出してみることから始めてみてください。



