
「オープンキャンパスは、何を変えれば高校生に届くのか」。大学・専門学校の広報担当として企画を任されると、まずこの点で迷うのではないでしょうか。Z世代の高校生は、来校する前に学校名や学科名をInstagramやTikTokで調べます。在校生の発信で雰囲気を確かめてから予約するのが一般的です。そのため、企画・告知・配布物を別々に考えるより、オープンキャンパスと学園祭を「1回目と2回目の来校」としてつなぐ方が成果につながります。紙とWebを行き来できる設計にしておくことも大切です。
この記事では、Z世代に届く企画アイデア、広告っぽさを抑えた配布物の作り方、学園祭に協賛・出展する企業側の実務、成果の測り方までを順にまとめます。私たちも大学向けホワイトペーパーの第2弾として、このテーマの実践アイデア集を公開しています。読み終えたときには、自校がどこから手を付けるべきかを判断できるはずです。
- Z世代はSNSで在校生のリアルを確かめてから来校するため、来校前に見られる情報づくりから始める
- オープンキャンパスと学園祭は別イベントではなく、1回目と2回目の来校として年間でつなぐ
- 配布物は広告っぽさを抑え、QRやフォトスポットでWebとSNSへ橋渡しする
- KPIは参加者数だけでなく、予約・再来校・出願まで媒体別に追える形で置く
Z世代に届くオープンキャンパスと学園祭の基本
集客が難しくなっている背景
オープンキャンパスの集客が年々難しくなっているのは、企画が悪いからとは限りません。少子化で18歳人口が減り、私立大学の約5割が定員割れしているとも言われます。高校生1人あたりの「比較される学校の数」が増えたと考えるのが実態に近いでしょう。
この状況では、来場者数を増やすことだけを目標にすると、毎年同じ企画に予算を上乗せする形になりがちです。私たちの感覚では、成果が出ている学校ほど「来た人が次も来たくなるか」「家に帰ってから誰かに話したくなるか」を重視しています。
集客の母数が減る時代には、1人の来場者から得られる接点を増やす発想が欠かせません。これが、後半で扱う「年間でつなぐ設計」の出発点になります。
Z世代はSNSで先に確かめてから来る
Z世代向けの告知では、「来校前に何が見られているか」を先に整えます。多くの高校生は学校名や学科名をInstagramやTikTokで検索し、在校生が発信する雰囲気を確認してから予約します。公式サイトやパンフレットは、その後の「答え合わせ」に使われることが多いのです。
そのため、短尺動画やSNS投稿では、整った学校紹介よりも在校生の一日や授業の一場面のような「リアルさ」が届きやすくなります。Web広告で認知を広げる場合も、広告の先にある在校生の発信が薄いと、予約にはつながりにくくなります。
特別イベントでSNSの注目を集め、そこからオープンキャンパスの予約へ誘導する「コンボ企画」も有効です。告知の起点をSNSに置き、Webの予約ページ、当日の体験までが一本の線でつながっているかを確認してください。
体験型と在校生主導の企画アイデア
当日の企画は、「説明を聞く場」から「体験して写真に残す場」へ寄せると反応が変わります。Z世代は、自分で撮った写真や動画で記憶し、それをSNSで共有するからです。写真映えする体験を用意すれば、来場者自身が次の来場者への告知役になってくれます。
具体的には、模擬授業を作品づくりや実験のような手を動かす形式にする、在校生が案内役を務めるキャンパスツアーを組む、学科ごとにフォトスポットを置く、といった企画が考えられます。在校生が主導する企画は、SNSで見た雰囲気と当日の印象が一致しやすく、信頼につながります。
心理的なハードルを下げる工夫も欠かせません。友人と参加できるペアオープンキャンパスや、夏休み・ハロウィンなど季節行事と連動させた回は、「1人で行くのは不安」という層を取り込めます。初めての来校をどれだけ気軽にできるかが、その後の再来校を左右します。
広告っぽさを抑える配布物とノベルティ
Z世代向けの配布物では、「持ち帰って使いたくなるか」を最優先します。広告らしさが強いものは、受け取っても読まれず、使われません。紙の販促物ほど、この傾向がはっきり出ます。
ノベルティはクリアファイル、トートバッグ、文具などの定番品が使いやすく、ロゴはワンポイントでさりげなく名入れするのがよいとされます。パンフレットも同じ考え方です。キャッチコピーを大きく並べるより、在校生の写真やキャンパスの日常風景を主役にし、学校名は控えめに置きます。そのほうが手元に残りやすくなります。
表紙を在校生のスナップ写真にし、裏面に「この写真の続きはこちら」とQRコードを添える。紙で興味を持った人が、そのまま在校生のSNSや動画へ移れる配布物になります。
読みやすさへの配慮も、広告らしさを抑えることにつながります。私たちには、メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)教育検定の認定を受けたデザイナーが在籍しています。色の組み合わせや文字の大きさを整えるだけでも、保護者を含め、より多くの人に読まれる紙面になります。
学園祭で企業がPRする方法
学園祭は、大学生や来場する高校生・保護者に企業が直接接点を持てる場です。主なPR方法は、ポスター掲載、学園祭パンフレットへの広告掲載、ブース出展、自社製品の配布(サンプリング)、優待券の配布、学生とのタイアップ企画です。
配布する場所は、来場者が必ず通る入口、人が滞留するメインステージ周辺、手が空きやすい飲食ブース付近が候補になります。ただし、どこで配布できるかは大学や実行委員会の判断次第なので、早めに確認しておきましょう。
Z世代に好感を持たれやすいのは、学生の困りごとを解決する協賛です。実技指導や備品の貸し出しなど、学生が準備で不安を抱えやすい部分を支える形の協賛は、一方的な宣伝よりも記憶に残ります。実行委員会に「何に困っているか」を最初に聞くことが、良い協賛の第一歩です。
Z世代向けオープンキャンパスと学園祭の進め方
年間で二つの来校をつなぐ設計
オープンキャンパスと学園祭は、担当部署も予算も別になりがちです。しかし高校生から見れば、どちらも「その学校に行く機会」です。学園祭を2回目の来校として位置づけると、1回目で生まれた興味を出願の検討まで育てやすくなります。
| 段階 | 主な接点 | 設計のねらい |
| 来校前 | SNS・短尺動画・Web広告 | 在校生のリアルを見せて予約を促す |
| 1回目の来校 | オープンキャンパス・パンフレット | 体験と写真で記憶に残し、学園祭の案内を渡す |
| 来校後 | Web・メール・SNS | 写真の続きや在校生の発信で関心を保つ |
| 2回目の来校 | 学園祭・ブース・スタンプ企画 | 友人や家族と再訪し、学校生活を具体的に想像させる |
| 出願前 | 個別相談・資料送付 | 不安を解消し、出願の判断を後押しする |
この流れで重要なのは、各段階で「次に何をすればいいか」を必ず渡すことです。たとえばオープンキャンパスで配るパンフレットに、学園祭の日程と特設ページのQRコードを入れておくだけで、2回目の来校への導線ができます。
オープンキャンパスの配布物には、必ず「次の来校」の案内を入れてください。日程・特設ページ・持ち物の3点が書いてあれば、学園祭への再来校を促す材料になります。
紙とデジタルをつなぐ仕掛け
紙の配布物は、Webへの入口として使うと効果が大きくなります。紙は手元に残り、Webは情報量と更新性に優れています。両方をつなぐことで、来校後も関心を保ちやすくなります。
よく使われる仕掛けを挙げます。
- パンフレットやチラシにQRコードを入れ、在校生の動画や予約ページへ案内する
- SNSに投稿したくなるパネルやフォトスポットを学科ごとに設置する
- パンフレットにARを仕込み、スマートフォンをかざすと動画や3D表示が出るようにする
- キャンパス内を回る記念スタンプ台紙やデジタルスタンプラリーで回遊を促す
- QRコードで回せるガチャを、アンケート回答のお礼に使う
QRコードは、配布物ごとに変えておくと、どの紙からアクセスが来たかを後で区別できます。私たちが扱うバリアブル印刷(1枚ごとに内容を変える印刷)を使えば、配布先や回ごとに異なるQRコードを刷り分けることも可能です。
回遊の仕掛けとしては、NFC型のデジタルスタンプラリーアプリ「ぴぴすた!」や、QRコードで回すレンタルガチャ「ピピットガチャ」も扱っています。ただし、仕掛けは数を増やすほど良いわけではありません。「どの行動を増やしたいか」から逆算して、1〜2個に絞るほうが来場者に伝わります。
企業が学園祭ブースを出すときの実務
学園祭に初めてブースを出す企業は、展示会と同じ感覚で準備を進めると戸惑う場面があります。会場の管理者が大学であり、運営の窓口が学生の実行委員会であることが多いためです。
| 確認項目 | 展示会 | 学園祭 |
| 主な来場者 | 商談を目的とする企業担当者 | 大学生・高校生・保護者・地域の人 |
| 窓口 | 主催者の事務局 | 大学・実行委員会 |
| ブースの目的 | 名刺獲得と商談創出 | 認知と好感、体験の提供 |
| 規定の確認先 | 出展規約 | 大学の許可・学内ルール |
準備では、まず大学の許可が必要な範囲(配布物の内容、火気・電源の使用、装飾の高さなど)を実行委員会に確認します。そのうえで、搬入の時間帯や車両の入構方法、予算と発注スケジュールを逆算します。印刷物やパネル、什器は、デザインの確定から納品までに日数がかかるため、開催日から逆算して発注日を決めておくと安心です。
ブースに置く什器を自社のブランドに合わせて作る場合は、オリジナル什器の企画から納品までの流れを先に押さえておくと、学内の搬入条件に合わせた相談がしやすくなります。展示会のブースづくりで使う考え方の多くは、学園祭でも応用できます。ターゲットが足を運びたくなるデザイン・装飾・コンテンツ・ノベルティを揃える、といった点です。
効果測定とKPIの置き方
Z世代向けの施策は、参加者数だけで評価すると判断を誤ります。SNSで話題になっても予約につながっていない、来場は多くても出願に結びつかない、といったずれが起きやすいからです。
大学側のKPIとしては、予約数・参加者数に加えて、学園祭への再来校数、資料請求や個別相談の数、出願数・入学率を段階ごとに置くのが基本です。媒体ごとの効果を比べるには、先に触れた「配布物ごとにQRコードを分ける」方法が役立ちます。どのパンフレットやポスターからアクセスが来たかが分かれば、翌年の予算配分の根拠になります。
企業が協賛・出展する場合は、配布数、ブースでの体験人数、アンケート回答数、優待券の利用数などを並べ、費用と比べてROI(投資対効果)を確認します。数字が取りにくい施策ほど、事前に「何をもって成功とするか」を決めておくことが大切です。
Q. オープンキャンパスと学園祭の担当部署が別々で、連携が難しい場合はどうすればよいですか
A. まずは配布物の1か所だけで連携するのが現実的です。オープンキャンパスのパンフレットに学園祭の日程と特設ページのQRコードを入れる、学園祭の受付で次回のオープンキャンパスの案内を配る、といった小さな接点から始めます。QRコードのアクセス数が取れれば、翌年に連携を広げる説得材料にもなります。部署をまたぐ会議を最初から開くより、成果が見える小さな連携を先に作る方が進めやすいはずです。
Q. 学園祭で企業が配るノベルティは何を選べばよいですか
A. 大学生の日常で使われるものを選ぶのが基本です。クリアファイル、トートバッグ、文具などの定番品に、ロゴをワンポイントで入れる程度に抑えると、持ち帰って使ってもらいやすくなります。QRコードを添えてアンケートやSNSアカウントへ誘導すれば、配りっぱなしで終わらず、配布後の反応も確認できます。配布してよい物の範囲は大学ごとに異なるため、事前に実行委員会へ確認してください。
総括:Z世代向けオープンキャンパスと学園祭の判断軸
Z世代は、SNSで在校生のリアルを確かめてから来校します。そのため、来校前に見られる情報づくりが最初の一手になります。オープンキャンパスと学園祭は1回目と2回目の来校としてつなぎ、配布物には必ず次の来校の案内を入れます。紙は広告っぽさを抑えてWebへの入口にし、QRコードを分けることで、予約から出願までを媒体別に追えるようにします。
まずは今年配る予定の配布物を並べ、「次の行動」と「計測の仕組み」がそれぞれに入っているかを確認するところから始めてみてください。



