
新商品の発売に合わせて店頭用の什器を作ることになったものの、社内に前例がなく、制作会社に何を伝えればよいのか分からない。この記事は、そんな立場で初めてオリジナル什器を発注する販促担当者やPMの方に向けて書いています。
オリジナル什器づくりは、形やデザインを考える前に「この什器で何を実現したいのか」を決めることから始まります。そのうえで、種類・材質・数量・納品形態をヒアリングで固め、実物に近いサンプルで重さ・色・サイズを確かめます。この順番で進めれば、手戻りの多くは防げます。
読み終えるころには、初回の打ち合わせで何を伝えればよいか、どこで失敗しやすいか、依頼先をどう比べればよいかを判断できるようになります。
- 最初に決めるのは形ではなく「什器で何を実現したいか」という目的
- ヒアリングでは種類・材質・数量・梱包と納品形態の4点を必ず固める
- 重量・色と素材・組み立て後と梱包時のサイズは実物に近いサンプルで確かめる
- 依頼先は企画から納品まで一貫して相談できるかで比べると手戻りが減る
オリジナル什器の制作で最初に決めること
まず何から考える?目的の整理から
オリジナル什器を作るときに最初に考えるべきなのは、形でもデザインでもありません。「何のために作るのか」という目的です。目的が決まらないまま形の話を始めると、見た目は良くても売場で役に立たない什器になりやすくなります。
理由は、目的によって合う形状・素材・仕様がまったく変わるからです。たとえば次のような目的が考えられます。
- 商品を陳列する
- 店頭で商品を目立たせる
- 展示会で商品・サービスを紹介する
- ブランドの世界観を表現する
- 限られたスペースを有効活用する
「商品を陳列する」が目的なら、商品を何点載せられるか、補充しやすいかが最優先になります。「ブランドの世界観を表現する」が目的なら、素材の質感や色の再現性に予算を回す判断もあり得ます。「限られたスペースを有効活用する」が目的なら、設置場所の寸法が設計の出発点になります。同じ「什器」でも、目的が違えば正解はまったく別のものになります。
社内で「とりあえず目立つものを」と依頼されているケースもよくあります。その場合も、目立たせた結果として何を増やしたいのか(手に取る人なのか、売場での滞在なのか、展示会での会話のきっかけなのか)まで一段掘り下げておくと、制作会社からの提案の精度が上がります。「何を作るか」より「何を実現したいのか」を言葉にすることが、什器制作の第一歩です。
意外と重要なヒアリングポイント
目的が決まったら、制作会社との打ち合わせで条件を固めていきます。デザインやサイズの話に目が行きがちですが、実際には次の4点が決まらないと、見積もりも設計も正確に出せません。
什器の種類は設置場所から選ぶ
「什器」と一言でいっても、床に直接置くフロア什器、レジ横などに置くカウンター什器、商品を吊り下げるハンガー什器、商品やサービスを見せるためのディスプレイ什器など、さまざまな種類があります。
どれを選ぶかは、目的と設置場所で決まります。置けるスペースの幅・奥行き・高さ、通路幅、床か台の上か、といった設置場所の情報は、写真や寸法を添えて伝えるのが確実です。
材質は見た目以外の条件で選ぶ
素材には紙製、段ボール製、アクリル製などがあります。見た目の好みだけで選ぶと後で困ることが多いため、耐久性・重量・コスト・使用期間をあわせて考えます。
たとえば短期間のキャンペーンで使うなら軽くて扱いやすい素材、長期間置き続けるなら傷みにくい素材、というように、使う期間から逆に絞り込むと判断しやすくなります。
数量によって製造方法が変わる
必要な数量によって、適した製造方法や製造ラインが変わります。少量生産と大量生産では、同じ設計・同じ製造方法が最適とは限りません。
そのため、数量は「まだ未定」ではなく、少ない場合と多い場合の見込みを幅で伝えておくのがおすすめです。製造方法の選び方が変わると、1台あたりの費用や納期も変わるためです。
梱包と納品形態を先に決める
完成品として納品するのか、組み立て式・ノックダウン式にするのかも、早い段階で決めておきたい項目です。納品形態は輸送コスト、保管スペース、現地での組み立て作業に直結します。
| 納品形態 | 向いている場面 | 気をつけたい点 |
| 完成品で納品 | 設置先で組み立ての手間をかけられない場合 | 輸送時と保管時にかさばりやすい |
| 組み立て式・ノックダウン式 | 多くの店舗へ送る場合や保管場所が限られる場合 | 現地で誰が組み立てるか、組立書が分かりやすいかを確認する |
打ち合わせの前に、次の項目を社内で整理しておくと話が早く進みます。
- 什器で実現したい目的と、成果をどう判断するか
- 設置場所の寸法と写真、設置する店舗や会場の数
- 陳列する商品の種類・サイズ・重さ・点数
- 必要な数量の見込みと使用期間
- 設置したい日と、そこから逆算した社内確認の締め切り
- 予算の上限と、完成品か組み立て式かの希望
什器制作では校正確認が重要
什器は立体物なので、平面のデザイン画面だけでは完成形をイメージしにくいものです。だからこそ、実物に近いサンプルを作って事前に確認する「校正確認」が欠かせません。ここを省くと、納品後に初めて問題に気づくことになります。
重量設計は商品の重さまで含める
什器本体の重さだけでなく、実際に陳列する商品の重さも考慮する必要があります。「完成した什器に商品を載せたら、想定以上に負荷がかかった」という事態は、校正確認の段階で防げる失敗です。
サンプル確認では、空の状態だけでなく、実際の商品を予定どおりの点数で載せた状態を確かめてください。棚板のたわみや傾き、商品を取り出したときの安定感は、商品を載せてみないと分かりません。
色と素材は実物で確かめる
紙・アクリル・木など、素材によって色の見え方や質感は異なります。画面上で良く見えた色が、素材に載ると沈んだり明るくなりすぎたりすることもあります。
ブランドカラーやパッケージの色合わせが重要な場合は、実際の素材を使ったサンプルで確認しましょう。確認する際は、売場の照明に近い環境で見るのが理想です。
組み立て後と梱包時のサイズ
図面ではコンパクトに見えても、実際に組み立てると想像以上に大きくなるケースがあります。また、梱包した状態のサイズも、輸送や保管を考えるうえで重要です。
「完成した状態」だけでなく、「組み立て前・梱包時・設置後」まで、制作会社と社内関係者でイメージを共有しておくことがポイントです。特に物流担当や店舗側の担当者に梱包サイズを早めに伝えておくと、受け入れ時のトラブルを減らせます。
オリジナル什器の制作を成功させる進め方
什器制作は作って終わりではない
什器制作には、ひとつの工程だけでは完結しない、いくつもの段階があります。おおまかな流れは次のとおりです。
- 企画
- デザイン
- 設計
- サンプル制作
- 校正確認
- 印刷・加工
- 梱包
- 納品・設置
工程が多いぶん、どこか1か所を別々の会社に分けて発注すると、情報の受け渡しで認識がずれやすくなります。デザインは良いのに組み立てにくい、梱包が大きすぎて店舗の受け入れに困る、といったずれは、工程間の連携不足から起きることが少なくありません。
また、什器は納品して終わりではありません。店舗や会場で実際に使われ、商品が補充され、期間が終われば撤去されます。設置後に「どう使われたか」を現場から聞いておくと、次の什器づくりの判断材料になります。
私たち小西印刷所は、企画・提案・デザイン・編集・制作から印刷・製本・加工・納品・発送までを社内一貫生産で進める体制をとっており、パネル加工や什器類の設計・作成も承っています。営業担当と社内の専門ディレクターがお客様先へ伺ってニーズを伺い、用途や数量に応じたご提案をします。納品は自社便による直接納品のほか、提携運送会社での遠方配送や宅配便での全国発送にも対応しています。
さらに、印刷・セールスプロモーション開発・プロダクツ開発の3つの事業領域を持つ日本創発グループ各社と連携することで、什器単体にとどまらず、販促物・ノベルティ・展示会ツールまで含めた提案にも対応できます。
費用と納期が決まる仕組み
オリジナル什器の費用は、大きく「数量に関係なくかかる費用」と「数量に応じて増える費用」に分けて考えると分かりやすくなります。
数量に関係なくかかるのは、企画やデザイン、設計、サンプル制作と校正確認、加工に必要な型などの準備にかかる費用です。一方、素材や印刷・加工、梱包、配送は数量に応じて増えていきます。準備にかかる費用を台数で割ることになるため、数量が多いほど1台あたりの費用は下がる傾向があります。少量で作る場合に1台あたりが割高に見えるのは、このためです。
相見積もりを比べるときは、合計金額だけを見ないことが大切です。デザインや設計が含まれているか、サンプル制作は何回まで含まれるか、梱包や配送、設置作業が含まれているかを項目ごとに確認しましょう。一見安い見積もりでも、必要な工程が別料金になっていれば、最終的な費用は逆転します。
納期は、設置したい日から逆算して組み立てます。サンプルの確認と修正には社内の承認も絡むため、思っている以上に時間がかかることが多いです。小売店へ提案して採用をもらう必要がある場合は、商談の締め切りも逆算の起点に加えてください。
社内稟議では、費用だけでなく「何をもって成功とするか」もあわせて示すと通りやすくなります。予定していた店舗のうち実際に設置された割合や、設置前後での売上の変化など、確認できる指標を事前に決めておくと、次回の判断にも使えます。
失敗しやすい場面と回避策
初めての什器制作でよく起きる失敗は、ほとんどが事前確認で防げるものです。代表的なものと回避策を整理します。
- 寸法が合わず設置できない
- 設置場所の実測値と写真を最初の打ち合わせで渡し、組み立て後のサイズをサンプルで確認します。
- 商品を載せたら傾いた・たわんだ
- 商品の重さと陳列点数を伝え、実際に商品を載せた状態でサンプルを確認します。
- 店舗で設置を断られる
- 大きさや置き方が売場のルールに合っているか、設置先の担当者に事前に確認しておきます。
- 現地で組み立てられない
- 組み立て式にする場合は、組立書を誰が見ても分かる内容にし、可能なら社内の第三者に組み立ててもらって確かめます。
見落とされがちなのが、売場の担当者にとっての扱いやすさです。補充しにくい、場所を取りすぎる、組み立てに時間がかかる、といった什器は現場で敬遠されやすく、場合によっては商品の取り扱いにまで影響する可能性があります。見た目の印象と同じくらい、現場で使う人の手間を減らす視点を持つことが大切です。
依頼先を選ぶときの判断軸
依頼先を比べるときは、品質・コスト・納期のバランスに加えて、「どこまで一貫して相談できるか」を重視することをおすすめします。前述のとおり、什器制作は工程が多く、工程の受け渡しでずれが生まれやすいためです。
具体的には、次の点を問い合わせ段階で確認すると判断しやすくなります。
- 目的のヒアリングから提案してくれるか、指示どおりに作るだけか
- 実物に近いサンプルを作って校正確認ができるか
- 数量に応じて製造方法を検討し、提案してくれるか
- 梱包・配送・設置まで任せられるか、別手配が必要か
- 什器以外の販促物もまとめて相談できるか
印刷会社に依頼する場合は、色の再現や校正の体制も確認したい点です。私たち小西印刷所では、校正専門のスタッフが文字の間違いだけでなく原稿自体の誤りまで確認しています。什器に載せる商品説明や価格表示のミスは、刷り直しになると費用も納期も大きく膨らむため、こうした確認体制があるかどうかは見積もり金額以上に効いてきます。
見積もりを比べる前に、自社が依頼先に任せたい範囲(企画だけか、配送・設置までか)を決めておくと、各社の見積もりを同じ条件で比べられます。
総括:オリジナル什器制作の流れと判断軸
オリジナル什器の制作は、形やデザインより先に「何を実現したいのか」という目的を決めるところから始まります。
ヒアリングでは什器の種類・材質・数量・梱包と納品形態の4点を固め、実物に近いサンプルで重量・色と素材・組み立て後と梱包時のサイズを確かめることで、納品後の手戻りを防げます。
依頼先は合計金額だけでなく、見積もりに含まれる工程と、企画から納品・設置まで一貫して相談できるかで比べるのが確実です。
まずは、この記事の確認項目をもとに、目的・設置場所・商品・数量・設置日を社内で1枚のメモにまとめるところから始めてみてください。











