企業におけるSDGsへの取り組みというと、地球環境やエネルギー、ジェンダーの問題など、大きなテーマに注目が集まりがち。そのことがかえって「うちみたいな中小企業には無理だから……」という足かせになっているのではないでしょうか。
「SDGs=持続可能な開発目標」という言葉の示す本来的な意味は、より広範で、一人ひとりがすぐに取り組めるような身近なものであってもよいのかもしれません。
今回はその一例として、一人の若手社員の声から始まった当社の小さなSDGs活動をご紹介します。
若手プログラマーの声から始まった、OSS支援団体への寄付活動
当社では、プログラミング言語PHPの開発を支援する非営利団体「The PHP Foundation」に、少額ですが毎月寄付を行っています。
これは、入社3年目の若手プログラマーMさんの発案で始まったもの。
PHPは、OSS(Open Source Software/オープンソースソフトウェア)として無償で提供されているプログラミング言語です。
OSSとは、ソースコードが公開されており、改変や再配布が自由に認められているソフトウェアのこと。代表的なOSSとしてプログラミング言語ではPHP、Java、Perl、Pythonが知られ、ソフトウェア開発において重要な役割を果たしています。当社のシステム開発にも主にこのPHPを使用しており、業務上なくてはならないツールとなっています。
PHPに限らず無償で提供されているOSSのほとんどは、基本的にボランティアの開発者たちに支えられており、利益を得られる仕組みになっていないのが現状です。
近年は多くのOSSが財政的な問題を抱えており、人気OSSの開発者が資金繰りに苦労して意図的にバグを混入させた事件(ITmedia)や、「Babel」開発者による『Babelは何百万人にも使われているのに、なぜ私たちの資金は尽きようとしているのか?』(ITmedia)という記事が話題になりました。
開発者のこうした声には賛否両論あるものの、自社のシステム開発に不可欠なOSS、なかでも重要なPHPの安定的な開発が不安視されるようになったことから「企業がOSSにタダ乗りするのは時代にそぐわない考え方となりつつあるのでは?」と考えたMさん。
自分なりにいろいろと調べた結果、PHPの開発支援団体への寄付を会社へ提案することにしました。
「これもSDGsにつながるのでは?」と考えることが第一歩
Mさんがこの提案を行った一番の理由は、「PHP開発団体の資金難により、セキュリティ面でのリスクなど間接的なデメリットを被る可能性があるから」ですが、もう一つの理由は「産業活動の基盤として広く普及しており、社会的インフラとも呼べるOSSを支援することが、企業としてのSDGs活動にもつながるのではないか」と考えたからです。
寄付先の団体「The PHP Foundation」が “持続可能なOSSを目指す” ことを掲げている点からも、OSSへの寄付はSDGsの理念に沿う行動であり、SDGsの目標8と目標9にあたるのでは、と考えたのです。
■目標8「働きがいも経済成長も」
経済的な見返りもなくボランティアで開発を続けているOSS開発者の持続的な活動を支援する
■目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
ITの基盤として広く普及しているOSSが、これからも持続可能であり続けるよう支援する
寄付そのものに直接的な見返りがあるわけではありませんが、広い意味でのSDGs活動の一環として社会に貢献することができます。こうした「これもSDGsにつながるのでは?」という視点こそが大切なことなのではないかと思います。
こうしてMさんの提案はすぐに採用され、ささやかな額ですが毎月継続して寄付(支援)を行うことが決まりました。
とかく大上段から語られがちな企業のSDGs活動。多くの中小企業にとって、本業においてSDGsに取り組むにはなかなかハードルの高い面がありますが、こういった形の活動であればすぐにでも始められるのではないでしょうか?
私たち小西印刷所では、今後もできることから少しずつ、社会貢献の一環として地道に取り組んでいきたいと考えています。